バリュープロポジションの「デザイン」とは?顧客価値を設計するVPC実践法

「高性能なプロダクトを作ったのに、なぜか売れない」「競合との価格競争から抜け出せない」。その根本原因は、プロダクトの機能ではなく、企業と顧客の間に存在する「価値のズレ」にあります。

この記事では、その「ズレ」を解消し、顧客にとって「これがなくては困る」という独自の価値を「設計(デザイン)」するための強力な思考ツール、バリュープロポジションキャンバス(VPC)の実践的な4ステップを解説します。

さらに、VPCで設計した「独自の価値」も、既存の比較サイトでは伝わらないという重大な罠と、その価値を100%顧客に伝達し、競合比較から脱却する本質的なWeb戦略(ポジショニングメディア)について、比較サイト戦略の専門家である株式会社コリンが解説します。

目次

なぜ、プロダクトの価値は顧客に伝わらないのか

多くのBtoB企業が「高性能なプロダクトを開発したのに、なぜか売れない」「営業担当は『間違いなく良い製品だ』とは言うが、顧客には一向に響かない」という深刻な課題に直面しています。その根本原因は、プロダクトの機能不足ではなく、企業と顧客の間に存在する「価値のズレ」にあります。

「なんとなく便利」と「これがなくては困る」を分けるもの

顧客が感じる価値には、天と地ほどの差があります。「なんとなく便利(Nice to have)」な機能は、顧客が漠然と「得たいもの(Gains)」を少し満たすだけです。これだけでは、顧客は高いお金を払ってまで導入しようとは思いません。

しかし、「これがなくては困る(Must have)」な機能は、顧客が日々抱えている深刻な「悩み・痛み(Pains)」を直接的に、そして劇的に解決します。顧客が身銭を切ってでも導入するのは、こちらの価値です。

多くのプロダクトが失敗するのは、企業側が「Gain Creator(利得を生むもの)」として自信満々にアピールしている機能が、顧客の最も深刻な「Pain(痛み)」を解決していない、あるいは、その繋がりを正しく顧客に伝えられていないからです。

価値のズレを可視化する「バリュープロポジションキャンバス(VPC)」

この「企業が提供したい価値」と「顧客が本当に求めている価値」の致命的なズレを解消し、両者を完璧に「適合(フィット)」させるために開発された思考ツールが、「バリュープロポジションキャンバス(VPC)」です。

これは、単なるフレームワーク(枠組み)ではありません。顧客のインサイト(深層心理)に基づき、自社が提供すべき「独自の価値」を論理的に「設計(デザイン)」するための、極めて強力な戦略ツールなのです。

VPC実践ワークフロー:顧客の「本質」を掴む4ステップ

バリュープロポジションキャンバス(VPC)は、ホワイトボードにポストイットを貼って完成させることが目的ではありません。顧客を深く理解し、提供価値を研ぎ澄ませ、チーム全体の共通認識を構築するための「プロセス」こそが最も重要です。ここでは、実務に活かすための具体的な4つのステップを解説します。

ステップ1:顧客セグメントの深掘り(Jobs, Pains, Gains)

まずは、プロダクトを「買う側」である顧客を徹底的に理解します(VPCの右側の円)。ここでは、自社の思い込みを捨て、顧客の視点に成り代わることが重要です。

  • Customer Jobs(顧客の仕事): 顧客が本質的に片付けたい「用事」や「課題」は何か?(例:単なる「請求書作成」ではなく、「請求ミスをゼロにし、経理部門の残業時間を削減する」といった機能的、社会的、感情的な仕事)
  • Pains(顧客の悩み): その仕事(Jobs)を片付ける上で、障害となっていること、恐れていること、イライラすることは何か?(例:毎月の手入力作業の手間、入力ミスによる失敗への恐怖、法改正への対応漏れのリスク
  • Gains(顧客の利得): 顧客が「こうなったら嬉しい」と密かに望んでいる結果やメリットは何か?(例:必須の利得「ミスなく請求できる」、期待する利得「作業時間が半分になる」、望外の利得「経営判断に必要なデータが自動で集計される」

ステップ2:提供価値の設計(Products, Pain Relievers, Gain Creators)

次に、顧客の理解に基づき、自社が「提供する側」の価値を設計します(VPCの左側の四角)。

  • Products & Services(製品とサービス): 自社が提供できる機能やサービスの一覧を、客観的にリストアップします。
  • Pain Relievers(痛みの緩和策): ステップ1で特定した顧客の「Pains」を、自社の機能やサービスが「具体的にどのように」軽減・解決できるのかを設計します
  • Gain Creators(利得の創出策): ステップ1で特定した顧客の「Gains」を、自社の機能やサービスが「具体的にどのように」実現・強化できるのかを設計します

ステップ3:「適合(フィット)」の検証と開発優先度の決定

VPCの左側(提供価値)と右側(顧客)の要素を照らし合わせ、両者がしっかりと「適合(フィット)」しているかを検証します。ここがVPCの心臓部です。

  • 自社の「Pain Relievers」は、顧客が抱える最も深刻な「Pains」を真正面から解決しているか?
  • 自社の「Gain Creators」は、顧客が最も強く望む「Gains」を実現しているか?

もしズレている場合(例:自社は「Gain Creators」に力を入れているが、顧客はそれよりも深刻な「Pain」の解決を望んでいる場合)、そのプロダクトは売れません。プロダクトの機能開発の優先度を見直すか、あるいはターゲットとする顧客セグメント自体が間違っている可能性があるため、戦略の修正が必要です。

ステップ4:チームの共通言語となる「価値提案」の明文化

フィットが確認できたら、それをシンプルで力強く、チーム全員の共通言語となる「価値提案(バリュープロポジション)」として明文化します。

(例:「[特定の法規制への対応に悩む〇〇業界の経理担当者(顧客セグメント)]が抱える、[法改正のたに対応漏れが発生する深刻なリスク(Pain)]を、[自動アップデートされる法規制対応機能(Pain Reliever)]によって完全に解決し、[担当者が本来の分析業務に集中できる時間(Gain)]を提供する」)

この研ぎ澄まされた一文が、マーケティング、営業、開発など、部門横断で共有する「北極星」となり、戦略の実行に一貫性をもたらします。

設計した「独自の価値」、正しく顧客に”伝達”できていますか?

VPCによって「独自の価値」を完璧に設計できたとしても、それだけでは成功とは言えません。その設計図がどれほど素晴らしくても、その価値を顧客に「伝達(デリバリー)」するためのチャネル(媒体)が間違っていれば、すべての努力は水の泡となります。

なぜ、優れた価値提案も「一般的な比較サイト」では伝わらないのか

VPCで設計した「独自の価値」は、多くの場合、非常にシャープで、特定の顧客が抱える特定の課題(Pain)に深く刺さるものです。

しかし、一般的な比較サイトやランキングサイトは、「機能の網羅性」「価格の安さ」といった、不特定多数のユーザーに向けた最大公約数的な、浅い指標でしかプロダクトを評価できません。

貴社がVPCで苦心して設計した「〇〇業界の法規制対応に特化した強固なセキュリティ機能(特定のPain Reliever)」も、比較サイトの画一的なフォーマット(比較表)の上では、単なる「機能A:◯」という一つのチェックボックスでしか表現されないのです。その機能が持つ価値の「重み」や「重要性」は完全に失われてしまいます

機能や価格の「比較の土俵」に上がることの戦略的リスク

独自の価値が伝わらないまま比較サイト(他社の土俵)に上がることは、自らVPCで定義した強みを捨て、競合が有利な土俵(価格や機能数)で戦うことを意味します。

貴社は、VPCで定義した「独自の価値(例:法規制対応)」で勝負したいのに、市場からは「価格」や「機能数」で比較され、本質的ではない消耗戦に引きずり込まれます。これは、VPCの設計思想と真逆の、最も避けるべき戦略的リスクです

VPCで見つけた価値を100%伝える「ポジショニングメディア」という戦略

既存のチャネル(比較サイト)が貴社のVPCを正しく伝達できないのであれば、発想を転換するしかありません。VPCで設計した独自の価値を100%伝えるための「専用チャネル」を自ら構築するという戦略です。それが「ポジショニングメディア」戦略です。

「一業界一社」だからこそ実現できる、貴社だけの価値基準の提示

ポジショニングメディアは、不特定多数の製品を比較するメディアではありません。「一業界一社」限定で、貴社のプロダクトが持つ独自の価値(VPC)こそが、顧客の課題を解決する唯一の最適解であると啓蒙するための戦略的メディアです。

一般的な比較サイトが提示する「価格」「機能数」といった古い価値基準ではなく、貴社のVPCに基づいた「新しい価値基準」(例:「法規制への対応力こそが、ツール選びの最重要基準である」)を市場に提示し、顧客を教育します。

競合と比較されない、貴社の価値が最も輝く市場を創造する

このメディア戦略により、顧客の判断基準そのものを「価格が安いのはどれか?」から、「[貴社のVPCが示す独自の価値]を持っているのはどれか?」へとシフトさせます

その結果、その新しい価値基準を持たない競合他社は「比較対象」から自然と外れ、貴社は「指名される」唯一の存在となります。VPCで設計した貴社の価値が最も輝く市場を、メディアの力で意図的に創造するのです

関連記事: ポジショニングメディアとは? 企業の強みを活かして集客するWeb戦略を解説

貴社の「独自の価値」を伝える、最適なメディア戦略のご相談

プロダクトの「独自の価値」を見つけ出すVPCの設計は、戦略の第一歩にすぎません。その価値を、競合のノイズに邪魔されることなく、100%の純度で顧客に届ける「伝達」戦略こそが、事業の成否を分けます

VPCの設計から、その価値を最大化するメディア構築まで伴走します

私たち株式会社コリンは、単にWebサイトを制作する会社ではありません。貴社の事業を深く理解し、VPCの設計(価値の発見・定義)という戦略の上流工程から、その価値を最大化する「ポジショニングメディア」の構築(価値の伝達・実行)までを、一気通貫で伴走する戦略的パートナーです。

貴社のVPCが、比較サイトの画一的な比較表のノイズに埋もれるのを防ぎ、あるべき顧客に、あるべき価値を届けます。

まずは無料の戦略相談で、貴社のプロダクトが持つ可能性を可視化しませんか

  • 「自社のプロダクトの『本当の価値』が、自分たちでも言語化できていない」
  • 「VPCを作ってみたが、どうマーケティングに活かせばいいか分からない」
  • 「競合との価格競争から、一刻も早く脱却したい」

こうした課題をお持ちであれば、まずは無料の戦略相談をご活用ください。貴社のプロダクトが持つ真の可能性をVPCで可視化し、それを実現するための最適なメディア戦略を、比較サイト戦略の専門家である私たちがご提案します

まとめ:価値の「設計」と「伝達」は一体。VPCを機能させるWeb戦略を

プロダクトの価値が顧客に伝わらない根本原因は、企業と顧客の「価値のズレ」にあります。そのズレを解消する「設計図」が、バリュープロポジションキャンバス(VPC)です。

しかし、どれほど優れた設計図(VPC)も、それを顧客に正しく「伝達」するチャネルがなければ意味をなしません。一般的な比較サイトは、VPCで定義した「独自の価値」を伝えるには不向きであり、むしろ価格競争という消耗戦を助長するリスクさえあります

VPCで設計した価値を100%顧客に届け、競合比較から脱却する本質的な解決策が、貴社がNo.1となる市場を創造する「ポジショニングメディア」戦略です。

VPCの設計から、その価値を伝えるメディア戦略の実行まで、一気通貫でのサポートが必要な場合は、ぜひ一度、比較サイト戦略の専門家である株式会社コリンにご相談ください。貴社の「独自の価値」を共にデザインし、それを届ける最適解をご提案します。

お問い合わせ・ご相談フォーム

    貴社名必須

    お名前必須

    メールアドレス必須

    電話番号必須

    部署名必須

    お問い合わせ内容(任意)

    比較サイト構築サービス「キメレルシステム」のご紹介