多くの企業が時間とコストをかけて定義した「バリュープロポジション(VP)」。しかし、それが立派な資料として棚に眠り、「お飾り」になってはいないでしょうか。VPは、定義すること自体が目的ではなく、現場のLP(ランディングページ)や営業トークといった「武器」として使いこなし、成果(CVRや受注率)を上げてこそ価値があります。
この記事では、なぜVPが現場で使われないのかという根本原因を解明し、VPを「売れるメッセージ」と「営業の武器」に「翻訳」し、組織全体に「浸透」させるための、具体的な8つの実装方法(使い方)を徹底解説します。
目次
多くの企業がワークショップまで開催し、全社で「これこそが我々の独自の価値だ」と合意したはずのバリュープロポジション(VP)。しかし、その高尚なスローガンが、現場のLPのCVRを改善させたり、営業の受注率を高めたりする「武器」になっているケースは稀です。
VP定義は、それ自体が目的ではなく、あくまで事業を成功に導くための「共通の羅針盤」を手に入れるプロセスに過ぎません。しかし、多くのプロジェクトでは、VPを言語化し、立派な資料にまとめた時点で「作って満足」してしまいます。
この「戦略策定」という上流のプロセスと、「現場実行」という下流のプロセスの間に、深くて暗い溝があることこそが、VPが機能しない最大の原因です。
VPは、本質的に抽象度の高い「戦略言語」です。(例:「我々は、〇〇業界におけるDXのラストワンマイルを支援する、唯一無二のパートナーである」)
しかし、現場で必要なのは具体的な「現場言語」です。(例:「貴社の古い受発注システムが原因で発生している、毎月の残業をゼロにします」)
この「戦略言語」から「現場言語」へと「翻訳」する作業と、その翻訳されたメッセージを、現場の誰もがいつでも正しく使えるように「浸透」させるためのトレーニングや仕組み(=プレイブック)が決定的に欠如しています。
本記事では、この「翻訳」と「浸透」をいかに実現するか、具体的な「使い方」を徹底解説します。
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マーケティング部門の最大の役割は、抽象的なVPを、顧客の行動を具体的に変える(=コンバージョンさせる)ための「売れるメッセージ」に翻訳することです。
LPのファーストビュー(FV)は、VPの主戦場です。VPの核心は「顧客のJob(課題)」と「自社のGain Creator(利得)」のフィットにあります。
FVのキャッチコピー(H1)は、VPが解決を約束する「顧客の最も深刻なPain(悩み)」を突きつけ、「自社だけが提供できる解決策(VP)」を簡潔に提示する場所でなければなりません。
VPが浸透していないLPは「我々の機能はこんなに素晴らしい」と語ります。VPを実装したLPは、「あなたのその悩み(Pain)、我々だけが解決できます」と語りかけます。VPに基づいてFVの論理構造を再設計することが、CVR改善の第一歩です。
VPが「〇〇業界のセキュリティ課題を解決する」ことだと定義されたなら、出稿する全ての広告クリエイティブも、そのVPに最適化します。
例えば、同じVPという「幹」から出発しても、訴求するセグメント(ペルソナ)によって響く「翻訳」は異なります。
このように、VPに基づいてセグメント別のクリエイティブを設計することで、広告のCTRと、その後のCVRを最大化します。
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VPは、コンテンツマーケティングの「編集方針(エディトリアルポリシー)」そのものです。VPで定義した「顧客のPain」こそが、オウンドメディアで取り上げるべき最重要テーマとなります。
VPから逆算することで、「なんとなくPVが稼げるキーワード」を狙う無駄なコンテンツ制作から脱却し、「受注につながる=VPに共感する」優良顧客が検索するキーワードにリソースを集中投下できます。VPは、無駄なマーケティングコストを削減するための羅針盤となります。
営業部門の役割は、VPを「商談の主導権を握るための武器」として使いこなし、競合との差別化を決定づけることです。
「会社概要」や「機能一覧」から始まる営業資料は、VPが浸透していない典型的な証拠です。それらの情報は、顧客のPainとは何の関係もありません。
VPを実装した資料は、「顧客の課題(Pain)の再認識」から始まります。商談の冒頭で、「様々な課題があるかと存じますが、貴社の本質的な課題は、我々が定義したVP(例:〇〇業界特有の非効率なアナログ業務)ではありませんか?」と問いかけ、顧客との間に「共通の課題認識」を構築します。この前提構築こそが、その後の製品説明(VPによる解決策の提示)を「売り込み」ではなく「課題解決の提案」へと昇華させます。
VPは、最強の「競合比較(差別化)トーク」の元ネタです。
「確かに競合のA社は価格が安いですね。彼らが解決できるのは表面的な課題(例:勤怠の打刻)だけです。しかし、我々のVPが解決する貴社の本質的な課題(例:複雑な法改正への自動対応というPain)は手付かずのままです。その結果、将来的に〇〇というリスクが発生します」
このように、VPを軸にすることで、競合を「価格」という土俵ではなく、「価値(=課題解決の深さ)」という自社が有利な土俵に引きずり込むことができます。
「なぜ、御社の製品はそんなに価格が高いのですか?」——この質問は、VPを語る絶好のチャンスです。
「良いご質問ありがとうございます。我々が高いのには、明確な理由があります。それは、他社が提供していない[VPの核心的な価値]を提供し、[顧客の最も深刻なPain]を根本から解決するためです。もしこのPainを放置し続けるコスト(例:コンプライアンス違反による年間〇〇円の損失リスク)と比較すれば、我々の価格はむしろ戦略的な投資であるとご理解いただけるはずです」
このように、VPは価格の正当性を論理的に説明し、価格を「コスト」から「投資」へと再定義する武器となります。
VPは、マーケティングと営業の「部分最適」に留まらず、開発部門も含めた全社の「全体最適」を導く「共通言語」として機能して初めて、その真価を発揮します。
VPは、プロダクト開発部門(PdM)にとっての「羅針盤」です。
次に追加すべき新機能AとBで迷った時、判断基準は「どちらが、我々のVPをより強固にし、顧客のPainをより深く解決するか?」であるべきです。VPに合致しない機能(競合がやっているから、という理由だけの機能)の開発優先度を下げることで、リソースを「独自の価値」の強化だけに集中させることができます。
これら1〜7の使い方を全て集約し、「メッセージング・プレイブック(Messaging Playbook)」という一冊のドキュメントにまとめること。これこそが、VPを「浸透」させる仕組みの答えです。
このプレイブック(VPの使い方マニュアル)には、以下を明記します。
このプレイブックを全社(特にマーケ・営業・開発・CS)で共有し、入社時のオンボーディングで徹底的にトレーニングすることで、VPは「お飾り」から「共通言語」へと進化します。
バリュープロポジション(VP)は、「定義すること」に価値があるのではなく、本記事で解説した8つの方法で「使いこなすこと」で初めて本物の競争力に変わります。
立派な戦略(VP)が「お飾り」になっている根本原因は、それを現場の武器に「翻訳」し、「浸透」させる仕組み(=プレイブック)の欠如にあります。
私たち株式会社コリンは、VPを定義して終わり、という無責任なコンサルティングは行いません。私たちは、VPの「使い方」から逆算し、それが現場の武器となるまでの「実装」、すなわち「翻訳」と「浸透」の仕組み(メッセージング・プレイブックの作成やトレーニング)までを伴走支援する専門家集団です。
「全社で合意したはずのVPが、現場で全く使われていない」
「VPを定義したが、LPのCVRも営業の受注率も一向に変わらない」
「マーケティングと営業のメッセージがバラバラで、顧客を混乱させている」
もし貴社がこのような「実装」の課題を抱えているなら、まずは無料の戦略相談で、そのVPが「お飾り」になっている根本原因をお聞かせください。貴社の価値を本物の競争力に変えるための、具体的なロードマップをご提案します。