要約 SUMMARY
この記事は約8分で読めます。
「営業が価格競争に陥っている」「マーケティングのメッセージが顧客に響かない」「開発と営業で『自社の強み』の認識がズレている」——。
こうした経営課題の根本原因は、「バリュープロポジション(VP)」「USP」「スローガン」という、事業の核となる言葉の定義が社内で混同されていることにあるかもしれません。
この記事では、多くの企業で曖昧になっているこれらの違いを、具体例と共にわかりやすく整理します。
そして、なぜバリュープロポジションこそが全社の「羅針盤」となる戦略の核なのか、また、なぜその策定が難しいのかを解き明かし、その本質的な解決策を提示します。
目次
バリュープロポジション(VP)は、事業戦略において最も重要な概念の一つですが、驚くほど多くの企業でその定義が混同されています。
なぜならVPは、「USP」や「キャッチコピー」といった、VPを構成する「一部の要素」やVPから生まれた「成果物」と非常に見た目が似ているからです。
しかし、これらを混同することは、羅針盤と船の帆を混同するようなもので、事業の方向性を根本から見失う原因となります。
USP(Unique Selling Proposition)は、文字通り「自社だけが持つ、独自の売り(強み)」を指します。これは、あくまで「企業側・製品側」の視点に立ったものです。
(例:「我々は、業界最速のCPUを搭載している」)
一方、バリュープロポジションは、その強みが「顧客にとって、どのような価値(課題解決)になるのか」を定義したものです。
(例:「我々は、競合A社が3時間かかるデータ処理をたった10分で終わらせ、あなたの残業をゼロにする」)
USPはVPを構築するための重要な「材料(インプット)」ではありますが、VPそのものではありません。顧客不在の「USP」だけを叫んでも、それは「自慢」にしかなりません。
キャッチコピーやスローガンは、VPに基づいて顧客の心に響くように「表現(アウトプット)」された、広告やLP(ランディングページ)で使われる言葉です。
(例:Apple社の「Think Different.」)
一方、バリュープロポジションは、そのコピーが生まれる前の「設計図(戦略)」であり、社内の共通言語です。
(例:「”常識を疑い、世界を変えたい”と願うクリエイティブな人々(顧客)に対し、Appleは直感的なツール(製品)を提供し、彼らの創造性を解放する(価値)」)
優れたVP(設計図)がなければ、どれだけ美しいキャッチコピー(表現)を作っても、それは中身のない「お飾り」になってしまい、顧客の心は動きません。
▶バリュープロポジションの「定義」とVPが経営戦略の核となる理由
バリュープロポジションの本質はたった一つ、「顧客が、数ある競合他社ではなく、なぜ“あなた”の製品・サービスを選ぶべきなのか」という理由を、明確に定義することです。
VPは、単なる言葉ではなく、一度定義されたら全社の「羅針盤」として機能しなければなりません。
この羅針盤がなければ、各部門はバラバラの方向に進み、全ての施策が空回りし、多大なリソース(広告費、営業工数、開発工数)が浪費されていきます。
▶バリュープロポジションの重要性|なぜVPを理解しないと、全ての施策が空回りするのか
では、具体的にどうすれば「良いVP」が作れるのでしょうか。失敗例と比較してみましょう。
「AI搭載」「クラウド対応」「充実のサポート」
→ 顧客の感想:「…だから何? 競合も同じことを言っている」
「従業員50名以下の中小企業経営者(顧客)が抱える『高機能なCRMは高すぎて手が出せない』という悩み(課題)に対し、当社は本当に必要な機能だけを厳選して月額1万円で提供(解決策)することで、大企業レベルの管理を低コストで実現します(価値)」
この「良いVP」は、広告コピーとしては長すぎますが、社内の「戦略」としては完璧です。「誰に」「何を」「どうやって」提供するかが明確だからです。
▶バリュープロポジションの作り方とは?実践的な策定方法を解説
これほど重要なVPですが、社内だけで作ろうとすると多くの場合失敗します。その理由は2つあります。
開発者や経営者は、「自社製品が最高だ」「顧客はこう思っているはずだ」という強い思い込みを持っています。
しかし、顧客の本音(インサイト)は往々にして全く違う場所にあります。このバイアスを捨てて、フラットに顧客の声を聞くことは、内部の人間には非常に困難です。
顧客の課題が見えても、競合他社がすでにそれを解決していたら、それはVPになりません。
「顧客が求めているが、競合は提供できておらず、自社だけが提供できる」という針の穴を通すような領域を見つけるには、徹底的かつ客観的な競合分析が必要です。
本記事では、バリュープロポジションをわかりやすく解説しました。
私たち株式会社コリンは、VP策定の専門家として、貴社の「戦略的原点」を定義するプロセスを支援します。
客観的な第三者として、顧客インタビューや競合分析を実施し、社内の「思い込み」を排した、論理的で客観的な「選ぶべき理由(VP)」を言語化します。
「自社の強みが伝わっていない気がする」「部門間で認識がズレている」という方は、ぜひ一度、無料の戦略相談をご活用ください。