バリュープロポジションとは、「他社には提供できず、自社だけが提供できる、ユーザーが求める価値」のことです。
近年、市場のニーズが多様化し、商品・サービスの種類が増加する中で、企業はユーザーニーズに基づいた差別化を図らなければ生き残れない状況に直面しています。
そのような状況下で、きちんとユーザーニーズに基づいて競合他社との差別化を図ることができる「バリュープロポジション」の考え方は非常に注目されています。
そこで、本記事ではバリュープロポジションの成功事例5選について紹介します。バリュープロポジションの作り方や注意点なども解説しているので、ぜひ皆さんの参考になれば幸いです。
また、バリュープロポジションの策定に活用しやすいように、テンプレートを作成しました。
テンプレートの他に、バリュープロポジションのメリットやキャンバスとの違い、メルカリのバリュープロポジション事例も入っています。無料でダウンロード可能なので、ぜひご活用ください。
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目次
バリュープロポジションとは、「他社には提供できず、自社だけが提供できる、ユーザーが求める価値」と定義されることが多いです。
もともと、マッキンゼー&カンパニーのMichael J.Lanning(マイケル・ラニング)氏とEdward G. Michaels(エドワード・マイケルズ)氏が1988年に発表した「A BUSINESS IS A VALUE DELIVERY SYSTEM(ビジネスとは価値提供システムである)」という論文で世に広まった概念です。
当時の定義としては、「どのような顧客グループに、どのような価格で、どのような利益を提供するのかを明示的かつ厳密に示したもの」でした。
ただし、先述したとおり現代では、「他社には提供できず、自社だけが提供できる、ユーザーが求める価値」と定義されることが多く、Customer(顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)という3Cの観点から、「自社独自の価値」を考察していきます。
上図の青枠部分のように、ユーザーのニーズと自社が提供する価値が重なる領域のうち、競合が提供できない部分のことをバリュープロポジションと言います。
つまり、自社だけがユーザーに提供することができる「独自価値」のことで、ユーザーにとっては「そのサービスを選ぶ理由」になります。
また、2015年には、アレックス・オスターワルダー氏の『バリュー・プロポジション・デザイン』という著作の中で、「バリュー・プロポジション・キャンバス」というフレームワークにその概念が落としこまれています。
バリュープロポジションは、近年どうして重要視されるようになったのでしょうか。
その背景には、市場ニーズの多様化があります。
近年では、市場のニーズが多様化し、商品・サービスの種類が増加する中で、企業は差別化を図らなければ生き残れない状況に直面しています。
そのような状況の中で、多くの企業は競合他社との差別化を図るために、新たな商品・サービスを開発したり、既存のサービスに新しい機能を追加したりと様々な試みを行いました。
しかし、競合他社との差別化を過度に意識した結果、まったくユーザーのニーズに合致していないサービスを生み出してしまい、ますますユーザーが離れていってしまうということが起きています。
だからこそ、ユーザーニーズを重視して競合との差別化を図ることができるバリュープロポジションが重要視されるようになったのです。
それでは、バリュープロポジションを活用するメリットはどのようなものなのでしょうか。
上記のように、近年特に重要視されているバリュープロポジションですが、
具体的には、以下3つのメリットがあります。
バリュープロポジションを作ることで、ユーザーニーズに基づいた「自社独自の価値」が明確になります。
これにより、既存のサービスにおいてユーザーに提供している価値とユーザーが求めている価値のズレを見つけ出すことができます。
ユーザーニーズとのズレはユーザー離れにつながり、売上・収益の低下に直結します。
バリュープロポジションを作り、ユーザーのニーズと合致することができれば、売上・収益の改善も見込めるでしょう。
後ほど、バリュープロポジションの正しい作り方について説明しますが、バリュープロポジションを作成する過程で、ユーザーニーズを徹底的に深ぼります。
その中で、今まで気付くことができていなかった新しいユーザーニーズに気付くことができます。
バリュープロポジションは、企業の事業戦略やマーケティング戦略のコア(根幹)になるものです。
そのため、新規事業開発、商品開発、広告のキャッチフレーズ、営業トークスクリプト、組織カルチャーへの浸透など、非常に幅広い分野で活用することができます。
次に、バリュープロポジションを適切に活用することで、成果を上げた事例を5つ紹介します。
Airbnbはバリュープロポジションを的確に策定することで、従来の宿泊業界との差別化に成功し、世界的な普及を遂げた一つの代表例です。
従来の宿泊施設はホテルや旅館が中心であり、旅行者が地元の文化や暮らしを深く体験する機会は限られていました。また、物件オーナーにとっても空き部屋を有効活用する手段が少なく、収益を上げるのが難しい状況でした。
Airbnbはそれらの課題に対して、旅行者に地元の暮らしを体験できる宿泊サービスを提供し、物件オーナーには空き部屋を収益化する機会を提供し、Airbnbというプラットフォームを通じて、旅行者とオーナーのマッチングがオンラインで簡単に行えるようにしました。
Airbnbの独自のバリュープロポジションは、旅行者が地元の文化を体験し、オーナーが空き部屋を有効活用できるという点であり、ユーザーニーズにも基づいたものであったため、大きな成功を収めました。
Slackもバリュープロポジションを適切に策定したことで、成果を上げた代表例の一つです。
従来のビジネスコミュニケーションツールは、チャット機能に特化していたり、スケジュール管理やファイル共有の機能が欠けているなど、複数のアプリを使い分ける必要がありました。このため、情報の共有や蓄積が効率的に行えず、企業内のコミュニケーションが滞ることが課題となっていました。
Slackはこれらの課題に対して、チャット、ファイル共有、スケジュール管理などビジネスに必要な機能を1つのツールに統合することで、職場でのコミュニケーションをシンプルにし、情報共有と蓄積を容易にしました。
Slackの独自のバリュープロポジションは、1つのツールで完結するシンプルなUXと生産性と信頼性の両立を提供するサービスであり、ユーザーニーズにも基づいたものであったため、成功に至りました。
Uberもバリュープロポジションを的確に策定しています。
従来のタクシー業界では、ユーザーが配車のために電話をかけたり、運転手に行き先を説明したり、現金を用意しなければいけない状況でした。
Uberはそれらの点に着目し、アプリ上でワンタップで配車を行い、目的地を事前に設定できる仕組みを作り出しました。また、支払いもアプリ内で完結することができるようにしました。
Uberの独自のバリュープロポジションは、上記のような「利便性」にあります。圧倒的な利便性によって、ユーザーの手間や精神的な負担を取り除くことができたため、世界中で多くのユーザーに利用されるサービスになりました。
Googleドライブもバリュープロポジションを的確に作り出すことによって、多くの人々に使われることになった代表例です。
従来のファイル共有方法では、ユーザーがメールでファイルを送信したり、USBメモリを使ってデータを移動したり、異なるバージョン管理に苦労する状況でした。
Googleドライブはそれらの点に着目し、オンライン上でファイルを簡単にアップロード・共有できる仕組みを作り出しました。
Googleドライブの独自のバリュープロポジションは、複数人が同時にファイルを編集でき、変更内容がリアルタイムで反映されることができるという点にあります。
メルカリもバリュープロポジションを的確に作り出すことによって、多くの人々に使われています。
従来の中古品売買では、ユーザーが中古品を売るために店舗に持ち込む手間と時間がかかり、査定額が低いという状況でした。
メルカリはそれらの点に着目し、アプリ上で簡単に出品・購入できる仕組みを作り出しました。ユーザーは24時間いつでもどこでも商品を自ら出品することができ、出品にかかる手数料も低く抑えることができるようになりました。
メルカリの独自のバリュープロポジションは、スマホひとつで簡単に自分で出品することができるという点にあります。
ここでは、バリュープロポジションの作り方について簡単に解説します。
バリュープロポジションは、以下の順番で策定していきます。
まずは、「ユーザーニーズ」を洗い出していきます。最初に「ユーザーニーズ」を徹底的に考えることで、「ユーザーニーズよりも自分たちの想いが先行してしまう」「既存の企業資産(アセット)に固執しすぎてしまう」ということを事前に防ぐことができます。
ユーザーが求める価値を考えるためには、ペルソナの設定が効果的です。
自社のサービスを求めるユーザーの人物像を選定したうえで、その人物は「どんなことに悩んでいて」、「どんな軸でそのサービスを選定しているのか」を徹底的に洗い出しておくことが重要です。
また、ペルソナの設定だけでなく、実際に自社サービスのユーザーにアプローチすることも重要です。
既存のお客様にインタビューを行ったり、アンケートに協力してもらったりすることで、ユーザーが求める価値をブラッシュアップしていきましょう。
ユーザーが求める価値を洗い出した上で、自社が提供できる価値を特定します。
自社の商品やサービスを客観的に分析し、ユーザーにどのような価値を提供できているのかを提供できているのかを洗い出していきましょう。
ただ、最初に洗い出した、ユーザーが求める価値とのズレがないかを確認することが重要です。
自分たちが今まで当たり前のように「自社の強み」だと感じていた価値であっても、改めてユーザーが求める価値と照らし合わせてみると、ズレが生じている場合もあるので、注意が必要です。
ユーザーが求める価値と自社ができる価値を洗い出したあとは、その中で競合他社が提供できない
価値(競合優位性)を見つけていきます。
上記の3つのプロセスを通して、
「ユーザーが求めていて、競合他社はできない、自社独自の価値=バリュープロポジション」を見つけていきます。
バリュープロポジションを作る際は次の3つの点に注意する必要があります。
自分たちの想いが先行してしまうと、ユーザーニーズが置き去りになった独りよがりのバリュープロポジションになってしまう可能性が高いので注意が必要です。
どんなにこだわったサービスであっても、ユーザーに求められていないサービスには価値がないことを忘れてはいけません。
既存の企業資産(アセット)に固執しすぎないことも注意点の一つです。
企業資産とは、既存顧客のデータベースやマーケティングノウハウ、テクノロジーなどを指しますが、それらのアセットを活用することに固執してしまうと、ユーザーニーズに基づいていないバリュープロポジションになってしまいます。
特に、既に成熟した産業や企業で企業資産(アセット)を多く有している企業は注意が必要です。
バリュープロポジションを作る際は、すべてのユーザーニーズに応えようとしないことが重要です。
もちろん、ユーザーニーズに応えること自体はとても重要ですが、すべてのユーザーニーズに応えようとしすぎてしまうと、バリュープロポジションが複雑になってしまい、かえって訴求すべきポイントが定まらなくなるという事態も起こりかねません。
ユーザーニーズをいくつか洗い出した上で、自社が最もクリティカルに応えることができるユーザーニーズは何かを考え抜くことが大切です。
バリュープロポジションキャンバスとは、顧客を深く分析することで自社のバリュープロポジションを把握・整理することができるフレームワークです。
Customer(顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)という3Cの観点から「自社独自の価値」を導き出すバリュープロポジションに対して、バリュープロポジションキャンバスは、より顧客に深くフォーカスして自社の価値を考察していきます。
特に、市場がまだ成熟しておらず(あるいは、存在していない)、競合他社が少ない段階では、3Cに基づいた分析は困難であるため、バリュープロポジションキャンバスが用いられることが多いです。
バリュープロポジションキャンバスは、一枚の紙(キャンバス)の上に「顧客セグメント」と「顧客への提供価値」の2つの要素を描くことで、両者の関係性を可視化します。
そのため、「顧客の求めていること」とズレている提供価値を明確にすることができます。
バリュープロポジションキャンバスは大きく以下の2つ部分から構成されています。
右:Customer Profile(顧客の課題・ニーズ)
左:Value Map(自社が提供できる価値)
そして、それぞれは3つの要素から成り立っています。
Customer Profile(顧客の課題・ニーズ)
・Customer Jobs:顧客が解決したいこと
・Gains:顧客の利得
・Pains:顧客の悩み
Value Map(自社が提供できる価値)
・Gain Creator:顧客の利得をもたらすもの
・Pain Reliever:顧客の悩みを取り除くもの
・Product and Service:商品やサービス
差別化マーケティングナビではバリュープロポジションキャンバスのテンプレートを配布しております。
作成事例も合わせてダウンロード可能なので、ぜひご活用ください。
バリュープロポジションの構成を説明しましたが、実際にどのように作成していけば良いのでしょうか。
ここでは、バリュープロポジションキャンバスの作り方を解説していきます。
まずは、自分たちがどのような顧客に商品・サービスを提供するのかを設定します。
ペルソナとして一人のユーザー像を作り出し、そのユーザーがどのような生活をしており、どのようなニーズを持っているのかを徹底的に洗い出しておくことが重要です。
次に、右側のCustomer Profile(顧客の課題・ニーズ)の3つの項目を埋めていきます。
1⃣ Customer Jobs:顧客が解決したい課題
最初に設定したペルソナを思い浮かべながら、顧客が解決したいことを考えていきます。
2⃣ Gains:顧客の利得
顧客が解決したい課題を洗い出したのちに、その課題が解決されることで顧客が得られる恩恵を埋めていきます。
3⃣ Pains:顧客の悩み
そして、課題を解決するにあたって、妨げとなる要因を埋めていきます。
以下は、フリマアプリを想定した場合のCustomer Profile(顧客の課題・ニーズ)です。
次に、左側のValue Map(自社が提供できる価値)を埋めていきます。
4⃣ Gain Creator:顧客の利得をもたらすもの
2⃣で洗い出した顧客の利得を提供するために、必要な機能や特徴を埋めていきます。
5⃣ Pain Reliever:顧客の悩みを取り除くもの
3⃣で洗い出した顧客の悩みを取り除くために、必要な機能や特徴を埋めていきます。
6⃣ Product and Service:商品やサービス
上記2つの機能や特徴を兼ね備えた商品やサービスを考えます。
以下は、フリマアプリを想定した場合のValue Map(自社が提供できる価値)です。
本記事では、バリュープロポジションについて成功事例や作り方に触れながら解説してきました。
バリュープロポジションを的確に策定することができれば、営業戦略・マーケティング戦略・商品開発など、非常に幅広い分野に活用することができます。
ただ、一方でバリュープロポジションを作る際にはいくつか注意点があり、バリュープロポジションを活用して成果を出すためには、正しい手順でバリュープロポジションを作ることが求められます。
「差別化マーケティングナビ」を運営する株式会社コリンは、バリュープロポジションを活用したマーケティング支援を強みとしている会社で、バリュープロポジションの策定からマーケティング施策の実行まで一気通貫で支援しております。
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