バリュープロポジションのデザインと実践

バリュープロポジションの「デザイン」とは?顧客価値を設計するVPC実践法

要約 SUMMARY

この記事は約7分で読めます。

  • 「良い製品なのに売れない」根本原因である、企業と顧客の“価値のズレ”を解消する方法
  • バリュープロポジションキャンバス(VPC)を使って「独自の価値」を設計する実践4ステップ
  • 設計した価値が「比較サイト」で死んでしまう理由と、正しく伝えるためのメディア戦略

「機能は競合より優れているのに、なぜか選ばれない」「結局、価格競争に巻き込まれてしまう」。
BtoBマーケティングにおいてこの悩みが尽きないのは、プロダクトの性能が低いからではありません。企業が届けたい価値と、顧客が求めている価値の間に「致命的なズレ(ミスマッチ)」があるからです。

本記事では、そのズレを解消し、顧客が「これこそが自分に必要なものだ」と確信する価値を「設計(デザイン)」するためのフレームワーク、「バリュープロポジションキャンバス(VPC)」の実践手法を解説します。

さらに、多くの企業が陥る「せっかく独自の価値を設計したのに、伝える場所(チャネル)を間違えて価値を殺してしまう」という罠と、その回避策についても言及します。

バリュープロポジションとは?重要性やメリット、作り方を解説

 

なぜ「バリュープロポジションのデザイン」が必要なのか?

価値のズレ

バリュープロポジションのデザインとは、単にキャッチコピーを作ることではありません。「顧客の課題(Pain)」と「自社の解決策(Solution)」をパズルのピースのように完全にフィットさせるプロセスのことです。

「Nice to have」ではなく「Must have」を作る

顧客にとっての価値は2種類あります。

  • Nice to have(あったら便利): 顧客の反応は「へぇ、すごいね(でも今は買わない)」。
  • Must have(なくては困る): 顧客の反応は「これこそが私の悩みを解決する(今すぐ欲しい)」。

多くの失敗するプロダクトは、開発者視点で「あったら便利」な機能を詰め込みます。しかし、デザイン思考に基づいて「Must have」を作るには、徹底的な顧客視点への転換が必要です。

可視化ツール「VPC」の役割

バリュープロポジションキャンバス

この「Must have」を見つけ出すためのツールが、アレックス・オスターワルダー氏らが考案した「バリュープロポジションキャンバス(VPC)」です。
右側の「顧客プロフィール(円)」と左側の「バリューマップ(四角)」を対比させ、ズレを可視化・修正するために使います。

バリュープロポジションの「定義」とVPが経営戦略の核となる理由

 

実践!独自の価値をデザインする4ステップ

VPCはただ埋めれば良いわけではありません。重要なのは「顧客のインサイト」を深掘りするプロセスです。

Step1:顧客の「痛み」と「望み」を特定する(右側)

まずは自社製品のことを忘れ、顧客(ペルソナ)になりきります。

  • Customer Jobs(片付けるべき用事): 顧客が機能的・社会的・感情的に解決したいタスクは?
    (例:請求書を発行する、上司に報告する、プロフェッショナルに見られたい)
  • Pains(悩み・痛み): タスク実行を邪魔するリスクや障害は?
    (例:手入力ミスへの恐怖、法改正対応の手間、残業過多)
  • Gains(利得・理想): 得られたら嬉しい成果は?
    (例:作業時間の半減、経営判断に使えるデータの可視化)

Step2:解決策と提供価値を定義する(左側)

次に、自社が提供できる価値を洗い出します。

  • Products & Services: 提供する製品や機能の一覧。
  • Pain Relievers(痛みの緩和): 顧客のPainをどうやって取り除くか?
    (例:AIによる自動入力でミスをゼロにする、法対応の自動アップデート)
  • Gain Creators(利得の創出): 顧客のGainsをどうやって実現するか?
    (例:ワンクリックでのレポート生成機能)

Step3:「フィット(適合)」を検証する

ここが最重要ステップです。「自社のPain Relieverは、顧客の最も深刻なPainを解決しているか?」を確認します。
もし、自社がアピールしたい機能が、顧客にとって「どうでもいいPain」に対するものなら、それは価値の押し売りです。このズレを修正し、パズルが噛み合うポイントを探します。

Step4:価値提案を「言語化」する

フィットした価値を、誰にでも伝わる言葉にします。

「私たちは [プロダクト名] によって、
[顧客セグメント] が抱える [深刻なPain] を、
[独自の解決策] で解決し、[理想的なGain] を提供する」

これが、貴社のバリュープロポジション(独自の価値提案)となります。

【テンプレート付き】バリュープロポジションキャンバスの作り方とは?

 

「設計した価値」が伝わらない?既存メディアの罠

価値が伝わらない罠

VPCで完璧な価値をデザインできても、マーケティングで失敗するケースがあります。それは、「独自の価値」を「画一的な物差し」で測られる場所に出してしまうからです。

比較サイトでは「独自の価値」が死んでしまう理由

VPCで導き出した価値は、「〇〇な課題を持つ人にとっての特効薬」のような、尖った価値であることが多いはずです。

しかし、一般的な「ランキングサイト」や「一括比較サイト」は、多数の製品を同じ指標(価格、機能の数、知名度)で横並びに比較する構造になっています。このフォーマットでは、貴社がデザインした「特定のPainを解決する独自の機能」も、単なる「機能一覧の〇×」の一つに埋もれてしまいます。

結果として、顧客は「違いがよく分からないから、一番安いもの・有名なものにしておこう」という判断になり、価格競争に巻き込まれるのです。

「価値のデザイン」と「価値の伝達」はセットである

鋭く尖ったバリュープロポジションを設計したのであれば、それを伝えるための「独自のチャネル」が必要です。既存の物差しで測られるのではなく、「貴社の価値基準こそが、選定において最も重要である」と顧客を教育できるメディアを持たなければなりません。

 

解決策:独自の価値を市場に浸透させる「ポジショニングメディア」

ポジショニングメディア戦略

VPCで設計した価値を100%顧客に伝え、指名買いを起こすための戦略が「ポジショニングメディア」です。

「一業界一社」で、貴社の価値が正解となる市場を作る

ポジショニングメディアは、単なる比較サイトとは異なり、「貴社の強み(VPC)と、顧客のニーズが合致する市場」を意図的に切り出して構築するWebメディアです。

例えば、「とにかく多機能なツール」が並ぶ市場の中で、「法対応の自動化に特化したツール」という軸を打ち立てます。そして、「なぜ法対応の自動化が重要なのか(Painの啓蒙)」を徹底的に発信することで、読者(顧客)の中に「多機能さよりも、法対応力が重要だ」という新しい選定基準を作ります。

これにより、競合とのスペック競争から脱却し、「私の悩みを解決してくれるのはこの製品しかない」という納得感を持った、質の高いリードを獲得することが可能になります。

マーケティングにおける「差別化戦略」とは?メリットやフレームワークを解説

 

まとめ:価値をデザインし、正しい場所で伝えよう

まとめ

プロダクトが売れない原因の多くは、機能不足ではなく、顧客のPainに対する「価値のズレ」と、それを伝える「手段のミス」にあります。

  1. VPC(バリュープロポジションキャンバス)を使って、顧客にとっての「Must have」な価値をデザインする。
  2. その独自価値が埋もれてしまう「既存の比較サイト」ではなく、価値が100%伝わる「ポジショニングメディア」で発信する。

この2つを戦略的に組み合わせることで、価格競争に巻き込まれることなく、貴社を必要とする顧客と出会うことができます。

私たち株式会社コリンは、VPCを用いた価値の抽出から、それを市場に浸透させるポジショニングメディアの制作・運用までを一気通貫で支援しています。「自社の本当の価値が見えない」「どうやって競合と差別化すればいいか分からない」とお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。

新規事業の成功確率を高めるバリュープロポジションの設計と検証

 

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