要約 SUMMARY
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「機能は競合より優れているのに、なぜか選ばれない」「結局、価格競争に巻き込まれてしまう」。
BtoBマーケティングにおいてこの悩みが尽きないのは、プロダクトの性能が低いからではありません。企業が届けたい価値と、顧客が求めている価値の間に「致命的なズレ(ミスマッチ)」があるからです。
本記事では、そのズレを解消し、顧客が「これこそが自分に必要なものだ」と確信する価値を「設計(デザイン)」するためのフレームワーク、「バリュープロポジションキャンバス(VPC)」の実践手法を解説します。
さらに、多くの企業が陥る「せっかく独自の価値を設計したのに、伝える場所(チャネル)を間違えて価値を殺してしまう」という罠と、その回避策についても言及します。
▶バリュープロポジションとは?重要性やメリット、作り方を解説
目次
バリュープロポジションのデザインとは、単にキャッチコピーを作ることではありません。「顧客の課題(Pain)」と「自社の解決策(Solution)」をパズルのピースのように完全にフィットさせるプロセスのことです。
顧客にとっての価値は2種類あります。
多くの失敗するプロダクトは、開発者視点で「あったら便利」な機能を詰め込みます。しかし、デザイン思考に基づいて「Must have」を作るには、徹底的な顧客視点への転換が必要です。
この「Must have」を見つけ出すためのツールが、アレックス・オスターワルダー氏らが考案した「バリュープロポジションキャンバス(VPC)」です。
右側の「顧客プロフィール(円)」と左側の「バリューマップ(四角)」を対比させ、ズレを可視化・修正するために使います。
▶バリュープロポジションの「定義」とVPが経営戦略の核となる理由
VPCはただ埋めれば良いわけではありません。重要なのは「顧客のインサイト」を深掘りするプロセスです。
まずは自社製品のことを忘れ、顧客(ペルソナ)になりきります。
次に、自社が提供できる価値を洗い出します。
ここが最重要ステップです。「自社のPain Relieverは、顧客の最も深刻なPainを解決しているか?」を確認します。
もし、自社がアピールしたい機能が、顧客にとって「どうでもいいPain」に対するものなら、それは価値の押し売りです。このズレを修正し、パズルが噛み合うポイントを探します。
フィットした価値を、誰にでも伝わる言葉にします。
「私たちは [プロダクト名] によって、
[顧客セグメント] が抱える [深刻なPain] を、
[独自の解決策] で解決し、[理想的なGain] を提供する」
これが、貴社のバリュープロポジション(独自の価値提案)となります。
▶【テンプレート付き】バリュープロポジションキャンバスの作り方とは?
VPCで完璧な価値をデザインできても、マーケティングで失敗するケースがあります。それは、「独自の価値」を「画一的な物差し」で測られる場所に出してしまうからです。
VPCで導き出した価値は、「〇〇な課題を持つ人にとっての特効薬」のような、尖った価値であることが多いはずです。
しかし、一般的な「ランキングサイト」や「一括比較サイト」は、多数の製品を同じ指標(価格、機能の数、知名度)で横並びに比較する構造になっています。このフォーマットでは、貴社がデザインした「特定のPainを解決する独自の機能」も、単なる「機能一覧の〇×」の一つに埋もれてしまいます。
結果として、顧客は「違いがよく分からないから、一番安いもの・有名なものにしておこう」という判断になり、価格競争に巻き込まれるのです。
鋭く尖ったバリュープロポジションを設計したのであれば、それを伝えるための「独自のチャネル」が必要です。既存の物差しで測られるのではなく、「貴社の価値基準こそが、選定において最も重要である」と顧客を教育できるメディアを持たなければなりません。
VPCで設計した価値を100%顧客に伝え、指名買いを起こすための戦略が「ポジショニングメディア」です。
ポジショニングメディアは、単なる比較サイトとは異なり、「貴社の強み(VPC)と、顧客のニーズが合致する市場」を意図的に切り出して構築するWebメディアです。
例えば、「とにかく多機能なツール」が並ぶ市場の中で、「法対応の自動化に特化したツール」という軸を打ち立てます。そして、「なぜ法対応の自動化が重要なのか(Painの啓蒙)」を徹底的に発信することで、読者(顧客)の中に「多機能さよりも、法対応力が重要だ」という新しい選定基準を作ります。
これにより、競合とのスペック競争から脱却し、「私の悩みを解決してくれるのはこの製品しかない」という納得感を持った、質の高いリードを獲得することが可能になります。
▶マーケティングにおける「差別化戦略」とは?メリットやフレームワークを解説
プロダクトが売れない原因の多くは、機能不足ではなく、顧客のPainに対する「価値のズレ」と、それを伝える「手段のミス」にあります。
この2つを戦略的に組み合わせることで、価格競争に巻き込まれることなく、貴社を必要とする顧客と出会うことができます。
私たち株式会社コリンは、VPCを用いた価値の抽出から、それを市場に浸透させるポジショニングメディアの制作・運用までを一気通貫で支援しています。「自社の本当の価値が見えない」「どうやって競合と差別化すればいいか分からない」とお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
▶新規事業の成功確率を高めるバリュープロポジションの設計と検証